
優しげなメロディーとスローなアレンジが、しとしとと降る雨を連想させて、自分にとって、この「雨の季節」には欠かせない1曲。
その「こぬか雨」が収録されているのが、伊藤銀次の1stソロデビュー作「Deadly Drive」。77年リリース作品。
「こぬか雨」は、もともとシュガーベイブのナンバーとして書かれた曲だったらしいけれども、結局シュガーベイブとしてはディスク化することなく終っている。
シュガーベイブのアレンジは、アップテンポでファンキーな物だったと聞くが、どんな雰囲気だったのだろう。
そんな04「こぬか雨」だが、このアルバムでは、静かで優しげなメロディーが、坂本龍一の弾くフェンダー・ローズの音色も相まって、しとしとと心を打つ。
シュガーベイブのファンキーなアレンジでなく、こういうアレンジに変えた所に、伊藤銀次のプロデューサーとしての才能を感じてしまうな。
その他の曲では、爽やかなメロディーが印象的な01「風になれるなら」も、自分のお気に入りの一つ。
大貫妙子のコーラスも、そんな爽やかさに花を添えている。
02「I'm Telling You Now」は、60年代のイギリスのバンド、フレディ&ザ・ドリーマーのカバー。
ゆったりしたレゲエ・アレンジで、原曲のイメージをいい意味で覆して、伊藤銀次のオリジナル・ソングと言えるくらいに昇華させている。
アルバムのタイトル曲03「Deadly Drive」は、村松邦男のギターを全面的にフィーチャーした、ノリの良いインストナンバー。
フュージョンっぽいノリが、心地良い1曲。
08「Hobo's Lullaby」は、アルバムの最後を飾るにふさわしいアーシーなアメリカン・ロックを感じるナンバー。
その他、トーキング・モジュレーターをフィーチャーしたファンキーなナンバー05「KING-KONG」や、なぜかサルサっぽいのノリの06「あの時はどしゃぶり」なども収録。
そして、このアルバム、ゲスト陣が豪華。
元シュガーベイブからは、村松邦男(G)、上原裕(Dr)、大貫妙子(Cho)、そして鈴木茂のハックルバックから田中章弘(B)、他には、坂本龍一はキーボードの他に、ホーンやストリングスのアレンジで参加。
こうやって名前を並べて行くと、ティンパンアレー、ナイアガラに関係したミュージシャンと言うのは、面白いほどに繋がりがあるのだな、と言うことも実感する。
それにしても、こんな名盤が、廃盤状態だと言うのは悲しいな。
と言うか、このアルバムだけでなく、伊藤銀次のアルバムは、軒並み廃盤なのは悲しい出来事。
特に、初期のポリスター時代のアルバム、再発されないかなぁ……。
【収録曲】
01. 風になれるなら
02. I'm Telling You Now(好きなんだ)
03. Deadly Drive
04. こぬか雨
05. KING-KONG
06. あの時はどしゃぶり
07. Sweet Daddy
08. Hobo's Lullaby(ホーボーズ・ララバイ)