2006年06月16日

伊藤銀次「Deadly Drive」

伊藤銀次「Deadly Drive」毎年、この時期になると聴きたくなる曲が、伊藤銀次の「こぬか雨」。
優しげなメロディーとスローなアレンジが、しとしとと降る雨を連想させて、自分にとって、この「雨の季節」には欠かせない1曲。

その「こぬか雨」が収録されているのが、伊藤銀次の1stソロデビュー作「Deadly Drive」。77年リリース作品。
「こぬか雨」は、もともとシュガーベイブのナンバーとして書かれた曲だったらしいけれども、結局シュガーベイブとしてはディスク化することなく終っている。
シュガーベイブのアレンジは、アップテンポでファンキーな物だったと聞くが、どんな雰囲気だったのだろう。

そんな04「こぬか雨」だが、このアルバムでは、静かで優しげなメロディーが、坂本龍一の弾くフェンダー・ローズの音色も相まって、しとしとと心を打つ。
シュガーベイブのファンキーなアレンジでなく、こういうアレンジに変えた所に、伊藤銀次のプロデューサーとしての才能を感じてしまうな。

その他の曲では、爽やかなメロディーが印象的な01「風になれるなら」も、自分のお気に入りの一つ。
大貫妙子のコーラスも、そんな爽やかさに花を添えている。
02「I'm Telling You Now」は、60年代のイギリスのバンド、フレディ&ザ・ドリーマーのカバー。
ゆったりしたレゲエ・アレンジで、原曲のイメージをいい意味で覆して、伊藤銀次のオリジナル・ソングと言えるくらいに昇華させている。
アルバムのタイトル曲03「Deadly Drive」は、村松邦男のギターを全面的にフィーチャーした、ノリの良いインストナンバー。
フュージョンっぽいノリが、心地良い1曲。
08「Hobo's Lullaby」は、アルバムの最後を飾るにふさわしいアーシーなアメリカン・ロックを感じるナンバー。
その他、トーキング・モジュレーターをフィーチャーしたファンキーなナンバー05「KING-KONG」や、なぜかサルサっぽいのノリの06「あの時はどしゃぶり」なども収録。

そして、このアルバム、ゲスト陣が豪華。
元シュガーベイブからは、村松邦男(G)、上原裕(Dr)、大貫妙子(Cho)、そして鈴木茂のハックルバックから田中章弘(B)、他には、坂本龍一はキーボードの他に、ホーンやストリングスのアレンジで参加。
こうやって名前を並べて行くと、ティンパンアレー、ナイアガラに関係したミュージシャンと言うのは、面白いほどに繋がりがあるのだな、と言うことも実感する。

それにしても、こんな名盤が、廃盤状態だと言うのは悲しいな。
と言うか、このアルバムだけでなく、伊藤銀次のアルバムは、軒並み廃盤なのは悲しい出来事。
特に、初期のポリスター時代のアルバム、再発されないかなぁ……。


【収録曲】
01. 風になれるなら
02. I'm Telling You Now(好きなんだ)
03. Deadly Drive
04. こぬか雨
05. KING-KONG
06. あの時はどしゃぶり
07. Sweet Daddy
08. Hobo's Lullaby(ホーボーズ・ララバイ)
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2006年06月06日

越美晴「おもちゃ箱 第1幕」

越美晴「おもちゃ箱第1幕」初期のRVC時代のベスト盤のリリースが決定したと言うことで、越美晴の1st「おもちゃ箱 第1幕」をご紹介。
今では、ヨーロピアンで独自な雰囲気を築いている越美晴(コシミハル)だけれども、79年発表の1stアルバムは、坂本龍一や矢野誠、萩田光雄らをアレンジャーに迎えたシティポップ路線。

作詞作曲は、全て越美晴自身だけれど、参加ミュージシャンがかなり豪華。
アレンジを担当した、坂本龍一(Key)、矢野誠(Key)を始めとして、高橋幸宏(Dr)、後藤次利(B)、小原礼(B)、村松邦男(G)、松原正樹(G)、山下達郎(Cho)、吉田美奈子(Cho)
などなど。
サディスティックス、シュガーベイブ、パラシュートなどに在籍した腕利きミュージシャン達が多数参加。
意外な所では、羽田健太郎(Key)なんて人も参加してます。

01「気まぐれハイウェイ」〜02「夢を見させて」の2曲の流れが、個人的にはベスト。
ピアノを中心にして、ポップに展開するアンサンブルが魅力的。
05「恋はファニーフィーリング」は、メロディのポップさはもちろん、山下達郎、吉田美奈子のコーラスがイイ雰囲気です。
坂本龍一がアレンジとキーボードで参加した04「スヌーピー」は、NHKの「みんなのうた」っぽい感じの可愛らしい雰囲気の曲。
同じく坂本アレンジの09「五月の風」も、西海岸風の爽やかなメロディーが印象的なポップソング。
10「不思議な女の子」は、後藤次利のベースがファンキーでカッコイイのだけれど、そういったファンキーなノリが、越のボーカルとは不釣り合いな感じがして、ちょっと残念……。

当時は、女性版原田真二として売り出そうとした向きもあるようで、そう意識して聞いてみると、なるほどな、と言う雰囲気も感じるアルバム。
萩田光雄がアレンジに参加しているせいもあるのか、太田裕美的な路線がちょっと入ってるかな、と言う気はしなくもない。
細野晴臣の片腕として(?)活動している現在からは、なかなか想像できないかもしれませんが。


【収録曲】
01. 気まぐれハイウェイ
02. 夢を見させて
03. ラスト・ドライヴ
04. スヌーピー
05. 恋はファニー・フィーリング
06. ラヴ・ステップ
07. 海辺
08. 行かないでよ
09. 五月の風
10. 不思議な女の子
posted by あれ at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャパニーズポップ 70's | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月25日

小坂忠「ほうろう」

小坂忠「ほうろう」ジャパニーズ・フリーソウルのマスターピース、小坂忠の「ほうろう」。
今さら、自分のような人間がわざわざ言う必要などないけど、このアルバムは名盤中の名盤。
いわゆる「シティポップ」の概念から、少しズレるかもしれないけれども、シティポップが生まれる土壌には、こういうアルバムもあった、と言う事でご紹介。

初期のソロ作では、牧歌的な匂いのするフォーク調のナンバーを唄っていた小坂忠が、ティンパンアレーを率いて突如としてR&B色の強いアルバムを発表。
このアルバム、やはり参加メンバーがスゴイ。
プロデュースが細野晴臣と小坂忠の共同で行われ、細野晴臣(B)、林立夫(Dr)、鈴木茂(G)、松任谷正隆(Key)と言うティンパンアレー陣営が演奏の核となり、コーラスには、山下達郎、吉田美奈子、大貫妙子、ホーンとストリングスのアレンジは矢野誠と、ティンパン・ファミリーが一堂に会している。

カッコ良さ、という点で言えば05「ゆうがたラブ」のグルーヴ感は、他に変えがたいものがある。
細野&林のファンキーなリズム隊に、鈴木のギターと松任谷のクラビネットが絡み合い、吉田美奈子のコーラスが、更にソウルフルな面を盛り上げる。
去年の夏、埼玉県の狭山で開かれた HYDE PARK MUSIC FESTIVAL でも、この曲は披露されたけれど、その時の"2005年バージョン"も、かなりカッコ良かった。
ジャパニーズ・ファンクの傑作の一つ。

ジャパニーズ・レアグルーヴと言った観点で言えば、小沢健二もカバーした06「しらけちまうぜ」も外せない。
ポップなメロディーながらも、70年代のソウル風なアレンジがキマっている。
自分としては、マーヴィン・ゲイやスティーヴィー・ワンダーの諸作と比べても、何ら遜色のない出来だと思っている。

このアルバムは、書き下ろしのナンバーの他に、カバーやリメイクも入っているのも一つの特徴。

04「氷雨月のスケッチ」09「ふうらい坊」の2曲は、はっぴいえんどのカバー。
どちらも、はっぴいえんどのオリジナルを、ソウルフルに翻案してカバーしたような雰囲気。
そして、そのようなソウルな雰囲気が、小坂のボーカルにハマっている名カバー。
02「機関車」は、1st「ありがとう」の中で唄われた曲のリメイクバージョン。
1stのカントリー風のアレンジよりも、ソウルフルに変身した「ほうろう」バージョンの方が、メロディーの良さや、歌詞の深みなどをより味わえるようになったと思う。
07「流星都市」は、細野、小坂らが組んでいたバンド、エイプリルフールの「タンジール」のリメイク作。
エイプリルフールにあった「ニューロック」とした雰囲気を排除して、かなりソウルフルなアレンジに生まれ変わっている(当然自分は「ほうろう」のバージョンの方が好き)。

正直な所、自分は、最初に聞いた時はこのアルバムの良さが分からなかった。
「しらけちまうぜ」のポップな雰囲気は好きだったけれど、他の曲の良さが分かるまで、かなりの時間がかかったような……。
でも、その時間がかかった分だけ、濃い時間を過ごしたのか、今では愛聴盤の一つ。
やはり、簡単に分かってしまうようなものは、飽きるのも早いってことなのかもしれない。

自分が、ティンパンアレーが関わった様々な音源を聞くようになったのは、もしかしたらこのアルバムがきっかけだったのかもしれないな、と今になるとそう思えてくる。


【収録曲】
01. ほうろう
02. 機関車
03. ボン・ボヤージ波止場
04. 氷雨月のスケッチ
05. ゆうがたラブ
06. しらけちまうぜ
07. 流星都市
08. つるべ糸
09. ふうらい坊
posted by あれ at 00:26| Comment(2) | TrackBack(0) | ジャパニーズポップ 70's | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月23日

太田裕美「海が泣いている」

太田裕美「海が泣いている」78年にリリースされた太田裕美のアルバム「海が泣いている」。L.A.でレコーディングされた9作目。
全曲、作詞:松本隆、作曲:筒美京平という、「木綿のハンカチーフ」を生み出したコンビによる作品。
レコーディングには、リー・リトナーなどの現地ミュージシャンを起用し、アレンジャーには、太田裕美作品の常連・萩田光雄の他に、サイモン&ガーファンクルの「明日にかける橋」などを手がけたジミー・ハスケルらが参加している。

このアルバムは、何と言っても01「スカーレットの毛布」に尽きる。
リー・リトナーによるギター・カッティングが心地良い、メロウグルーヴなナンバー。
16ビートを刻むドラムスに、リトナーのギターなど、フュージョンのテイストが満載のナンバーなので、シティポップ好きの間でも、もっと評価されても良いのでは?
77年の「こけてぃっしゅ」もシティポップ的な評価が高い作品だけれども、それ以外のアルバムも聞き逃せないことを実感。

その他の曲を紹介すると、03「茉莉の結婚」は、メロディーがフォーク調ながら、サウンドはかなりL.A.風。
歌詞も、かなりドメスティックな雰囲気ではあるのだけれど、リトナーのギターソロは、一聴の価値はある。
レゲエのリズムをポップに消化した07「ナイーブ」も、ちょっと変則的ながら、なかなか良い雰囲気のポップソング。
10「∞(アンリミテッド)」は、ちょっとディスコ寄りのアレンジではあるけれども、シティポップの範疇に入れてもいいかな、というナンバー。
グルーヴィーなベースラインが、なかなかカッコ良い。

アルバム全体を通して聞くと、ちょっとフォーク色が強い面も感じるけれども、シティポップ好きなら「スカーレットの毛布」だけでもを聞いてみる価値はある。
筒美京平好きが、思わぬ所で役立ったと思った瞬間。


【収録曲】
01. スカーレットの毛布
02. 振り向けばイエスタディ
03. 茉莉の結婚
04. Nenne
05. 街の雪
06. 海が泣いている
07. ナイーブ
08. 水鏡
09. 女優(ヒロイン)
10. ∞(アンリミテッド)
posted by あれ at 23:38| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャパニーズポップ 70's | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年05月17日

松任谷正隆「夜の旅人」

松任谷正隆「夜の旅人」松任谷正隆が77年に発表したソロアルバム「夜の旅人」。
全ての曲が、作詞・松任谷由実、作曲/編曲・松任谷正隆によるもので、ボーカルを努めるのは、松任谷自身。
細野晴臣、鈴木茂、林立夫らのティンパンアレーを中心にバックを固め、キーボードは当然、松任谷本人。

このアルバムに興味を持ったきっかけは、ティンパンアレーの1stアルバム「キャラメル・ママ」に収録されていた「月にてらされて」と言う曲。
この曲でボーカルを取っている松任谷が、決して上手ではないのだけれど、なんとも言えない、いい味を出していて、かなり好きな曲になり、その他のボーカル曲も聴いてみたい、と思ったのが最初のきっかけ。

そんなアルバムでありますが、粒ぞろいの曲が全部で9曲。
このアルバムの中で、屈指のポップチューンと言えるのが、08「Hong Kong Night Sight」。
ポップなメロディーが良いのはもちろんですが、ハネるリズムが軽快で心地良い(このベースは細野さんなのかな?)。
後にユーミンが「水の中のASIAへ」でカバーするけれど、個人的にはユーミンのバージョンよりも、こちらの方が断然好き。
正直、ユーミンよりも、正隆のボーカルの方が、この曲にハマってると思います。

シティポップという視点で語るなら、06「気づいたときは遅いもの」は、松任谷なりのAORという雰囲気を感じる1曲。
他にも、オープニングの01「沈黙の時間」は、ストリングスとブラスがゴージャスな雰囲気をちりばめる、爽やかなポップソング。

そう言うポップな曲とともに、静かめな曲も、もちろん魅力がある。
個人的には、アルバムのタイトルチューンである09「夜の旅人」が、一番好きな曲。
マイケル・フランクス風とも言えるシンプルなサウンドに、朴訥に歌う松任谷の歌が味わい深い。
それから、ユーミンの書いた歌詞も、この曲を更に深いものしているように思う。
他にも、大貫妙子とのデュエット02「荒涼」、かまやつひろしに提供した曲のセルフカバー04「霜の降りた朝」なども、聞き所。

ポップな曲も、静かな曲も、どれも松任谷の声質に合っているので、じっくりと聞き込んでも飽きがこない1枚。
やはりユーミンのプロデューサーだけあって、自分の声の特製をうまく掴んで、それに似合う曲を歌ったんだろうな、と言う事も想像がつきます。
「シンガー・松任谷正隆」を気に入っただけかと思っていたら、思わぬ所で「プロデューサー・松任谷正隆」の手腕も知る事になった、という感じでしょうか。
まぁ、そう言う能書きは抜きにして、良いアルバムだと思います。

ちなみに、ジャケットのイラストは、ユーミンの作。僕はなかなか好きな感じの絵です。


【収録曲】
01. 沈黙の時間
02. 荒涼
03. 煙草を消して
04. 霜の降りた朝
05. もう二度と
06. 気づいた時には遅いもの
07. 乗り遅れた男
08. Hong Kong Night Sight
09. 夜の旅人
posted by あれ at 01:16| Comment(4) | TrackBack(0) | ジャパニーズポップ 70's | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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