2007年06月06日

須藤薫「Tender Love」

須藤薫「Tender Love」杉真理に続いて、須藤薫のアルバムまでも紙ジャケリマスターで再発されるそうで、後追いのファンとしては、うれしいニュースであります。
「Hello Again」以降のアルバムは、なんとか中古盤で揃えた自分としては、それ以前の作品のリイシューと言うことで、かなり嬉しく思う。

そんなワケで、今回取り上げるのは、須藤薫が89年発表した「Tender Love」。
このアルバムのサウンド・プロデュースは、当時ピチカートファイヴだった小西康陽。
全ての曲のアレンジを小西が担当し、アルバムを通して聴くと、小西康陽によるウォール・オブ・サウンド〜フィル・スペクターへのオマージュと言えそうなアルバム。

01「つのる想い」から、深めのエコーに彩られた「ウォール・オブ・サウンド」な世界を展開していて、60年代ポップス好きには、何の抵抗もなく受け入れられそうな雰囲気。
イントロからロネッツの「Be My Baby」を引用しているのは、間違いなく確信犯でしょう。
タイトルの「つのる想い」も、スペクター曲の邦題から引用している点も、好感が持てる。
それにしても、こう言うゴージャスなストリングス・アレンジを施している曲って、最近聴かなくなったな(ストリングス&ホーンのアレンジは、当時ピチカート・ファイヴの高浪敬太郎)。

02「Sugar Romance」は、大滝詠一の「FUN×4」的なポップ感に溢れた曲。
「♪ パッシュ ワディ ワディ」と言うコーラスも、オールディーズ風でなかなか。

03「春の陽射し」は、ビーチボーイズの「Please Let Me Wonder」あたりを下敷きに作られたような曲。
田島貴男らの幾重にも重なったコーラスも、ビーチボーイズ風。自分はかなり好きな1曲。

ベン・E・キングの「Stand By Me」のフレーズの引用から始まる04「トーチ・ソング」は、オールディーズ風のしっとりしたポップソング。

05「二人のシルエット」は、三連系のしっとりした曲で、ビーチボーイズの「Surfer Girl」などを思い浮かべる。

06「最後のD.P.E」は、ミディアム・テンポのしっとりしたポップソング。
イントロのフレーズが、デイブ・クラーク・ファイヴの「Because」っぽいが、これも確信犯?

07「おねがいラヴァーマン」は、「Couples」の頃のピチカートにも通じるような雰囲気の曲。
50年代のアメリカのテレビ映画のサントラにありそうな雰囲気のアレンジが楽しい。

08「恋のマニュアル・ブック」は、アップテンポなポップナンバーで、「ウォール・オブ・サウンド」的な世界からはちょっと離れているけれども、これはこれで好き。
同時期のピチカートファイヴ(田島貴男ボーカル期)に一番近いサウンドかな?

09「去年の夏」は、再び「ウォール・オブ・サウンド」的なサウンドを展開。
この曲のみ、作曲も小西康陽で、ミディアムテンポのしっとりした曲。
イントロに、どことなくグレン・キャンベルの「I Guess I'm Dumb」っぽい雰囲気を感じる。

10「冬のゴスペル」は三連系の曲で、アルバムを締めくくるのにふさわしい静か目な曲。
この曲でも、ゴージャスなストリングスが効果的。

何となく歌詞を辿っていくと、01「つのる想い」から10「冬のゴスペル」までが、二人の男女の出会いから別れまでを追った短編集なのかな、と言うような気もしてくる。
すべての曲で小西が作詞したワケではないけれども、01「つのる想い」の出会った時のドキドキ感から、10「冬のゴスペル」での悲しい別れまで、何となく一つのストーリーになっているような気がするのだが、どうだろう?

サウンド的には、アルバムを通して聴くと、最初に指摘したように、フィル・スペクター〜ビーチボーイズ〜大瀧詠一といった「ウォール・オブ・サウンド」を継承していく流れの中の1枚、と言った趣きを感じる。
そんな面からも、大瀧詠一がプロデュースしたシリア・ポールの「夢で逢えたら」との符合を感じる。
改めて聞き直してみて、ポップなメロディーはもちろん、ロマンティックでゴージャスなストリングスに圧倒される部分が多かった。
「夢で〜」が好きな人には、是非とも聴いてもらいたい1枚。


【収録曲】
01. つのる想い
02. Sugar Romance
03. 春の陽射し
04. トーチ・ソング
05. ふたりのシルエット
06. 最後のD.P.E.
07. おねがいラヴァーマン
08. 恋のマニュアル・ブック
09. 去年の夏
10. 冬のゴスペル


♪須藤薫「つのる想い」
posted by あれ at 00:03| Comment(0) | TrackBack(0) | ジャパニーズポップ 80's | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年06月05日

吉田美奈子「FLAPPER」

吉田美奈子「FLAPPER」この所、何となく吉田美奈子ばかり聴いている。
ちょっと前までは、アルファ時代のファンク路線が好きだったが、久しぶりに「FLAPPER」を聞き直してみたら、こんなにも良いアルバムだったのかと、評価を改めた次第。
そんなワケで、今回は吉田美奈子が76年に発表した「FLAPPER」を取り上げてみる。

このアルバムは、なんと言っても参加しているミュージシャンが豪華。
細野晴臣(B)、鈴木茂(G)、林立夫(Dr)、松任谷正隆(Key)と言ったティンパン勢をはじめ、佐藤博(Key)、矢野誠(Key)、矢野顕子(key)、浜口茂外也(Per)、山下達郎(cho)、大貫妙子(cho)らのティンパン周辺のミュージシャン、そして村上秀一(Dr)、高水健司(B)、松木恒秀(G)といった腕利きのスタジオミュージシャンたちも参加している。
そう言ったミュージシャンだけでなく、作曲家陣もバラエティに富んでいて、吉田美奈子のオリジナル曲のほか、山下達郎2曲、細野晴臣1曲、大瀧詠一1曲、矢野顕子1曲、佐藤博2曲と言った具合。

アルバムのオープニングを飾る01「愛は彼方」。
吉田美奈子のソウルフルなボーカルが印象に残る1曲で、バッキングの中心はティンパンアレーの面々。
AOR風な側面、ソウル風な側面、ポップス的な側面、ファンク的な側面が一つの世界観の中に凝縮されているような(?)曲で、このアルバムのオープニングを飾るのにふさわしいナンバーと言えるかも。
とにかくカッコイイとしか言いようがない。

矢野顕子が作曲した02「かたおもい」は、いかにも矢野顕子らしいメロディーラインを持った曲。
細野&林のティンパン・リズム隊が、その独特な世界を更に深いものにしている。

佐藤博の作曲による03「朝は君に」は、このアルバムの中では一番AOR風な音作り(当時AORと言う表現があったか知らないが…)。
メロディーはもちろんのこと、佐藤博のエレピのフレーズや松木恒秀のギターのカッティングが、AOR的なメロウな世界観を作り上げている1曲。
自分はこのアルバムの中で一番好きな曲かもしれない。

04「ケッペキにいさん」は、その後のファンク路線を感じさせる1曲。
ドラム&ベースだけでなく、ピアノとクラビネットまでもリズム楽器と化しているような雰囲気。
改めて聴いてみると、このリズムはもの凄いな。

細野晴臣作曲の05「ラムはお好き?」は、初期のユーミンにも通じる、セカンドライン的なサウンド作り。
バッキングはもちろんティンパンアレー勢で、少々ユーモラスな雰囲気も、ティンパンならではと言えるかもしれない。

日本語曲で最もカバー曲が多いとも言われる06「夢で逢えたら」。
元々大瀧詠一がアン・ルイス用に書いた曲だったのがボツになり、吉田美奈子に流用したと言う、曰く付きの曲。
アレンジの多羅尾伴内は、言うまでもなく大瀧本人。
(様々なカバーに関しては、夢で逢えたら Perfect Collectionと言う詳しく解説したページがありますので、そちらを参照して下さい)

07「チョッカイ」は、久しぶりに聴いて驚いた1曲。
かなりスライ&ザ・ファミリーストーンしているのが無茶苦茶カッコイイ。
後のニューヨーク的なファンクではなく、もっと泥臭い感じのファンク。
高水健司のブイブイとうなるベースと、重たいリズムを叩くポンタのドラムがたまらない。

08「忘れかけていた季節へ」は、吉田美奈子自身が弾くピアノに、ストリングスが重なっていくバラード曲。
このアルバムの中では、デビューアルバムの「扉の冬」の路線に一番近いのは、この曲かな。

作者である山下達郎自身も後にセルフカバーする09「LAST STEP」。
ティンパン勢がバックに参加していることもあってか、少々セカンドライン寄りのアレンジ。
この曲も05「ラムはお好き?」のように初期のユーミンっぽい雰囲気も感じる。

アルバムのラストを締めくくるのは、名バラード10「永遠に」。
この曲も作者である山下達郎自身がセルフカバーしている。

色んな要素が混在していて、アルバムとして聴くと少々散漫な気はするけれども、一つ一つの曲はそれぞれに魅力的。
ネット上の評判を見てみても、「ティンパンアレーが参加したポップアルバム」的評価と、「ジャパニーズ・ファンクの源流」的評価と二通りあるようだが、そう言う二つの路線が一つのアルバムにまとめられている点が、このアルバムの個性的な部分であるようにも思う。


【収録曲】
01. 愛は彼方
02. かたおもい
03. 朝は君に
04. ケッペキにいさん
05. ラムはお好き?
06. 夢で逢えたら
07. チョッカイ
08. 忘れかけてた季節へ
09. LAST STEP
10. 永遠に
posted by あれ at 01:32| Comment(6) | TrackBack(2) | ジャパニーズポップ 70's | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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